小さい腕でトロンボーンを支えていた頃の話
今となっては驚かれるかもしれませんが、小学校の頃に吹奏楽部に入ってトロンボーンを吹いていました。
母校は過去にマーチングバンドで全国大会まで行く輝かしい実績を持つ有名校だったのですが、
メンバーが徐々に集まらず、15年ほど前から廃部になっていたそうです。
音楽室の倉庫でときどき見るピカピカした楽器に興味はありました。
けれども、触る機会なんてあるはずもないし、
まさか演奏することになるとは自分でも思っていませんでした。
高学年の頃の担任が何やらおもしろい人で僕と非常に気があっていたのですが、
彼が中学時代からずっと音楽をやる人だとは学校中で誰ひとり知ることもなかったでしょう。
昼休みの度に校庭で、児童と走り回っている印象が強かったせいでしょう。
僕はあまり運動が得意ではなかったけど、その担任のいる日は外に出て遊んでいました。
みんなが新しいクラスに馴染みはじめる5月の頃でした。
担任から「金管バンドをつくるから一緒にやろう」と誘われたのです。
金管バンドとは金管楽器と打楽器で構成される演奏の形式だという意味合いのことを、
担任はもっと小学生にわかることばにして説明をしました。
強豪だった母校とは似ても似つかない姿ですが、新しい吹奏楽部が始まりました。
当時、練習は平日の朝、1時間ほど。
朝が苦手な僕でしたが、毎日の早起きが苦ではありませんでした。
集まっている子たちが全員ゼロからのスタートなので、仲間意識のようなものもすごく強かったです。
ひとつひとつの音が重なって、ひとつになっていく過程にみんなでどきどきできました。
何よりピカピカした楽器を持って自信を持って人前に立てる自分が、以前よりも好きになれました。
僕の卒業した数年後に校舎が建てなおされ、練習した部屋はなくなってしまったけれど
吹奏楽部はどんなようすだろうか。
あのトロンボーンはまた誰かが使っているのだろうか。
ありふれた思い出ではあるけれど、同じチーム、同じ楽器を通して
新しい経験をしているのではないかと思うとちょっとわくわくしてしまう。
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