化学実験室で生まれた「ミミ」


もう忘れるほど昔の話です。
このテーマに出会ってふと思い出しましたので、お話しますね。

ミミと出会ったのは、私の高校の文化祭でした。
ミミとは、実験動物として飼われていたハツカネズミです。

ミミは、化学実験室で生まれましたのでほとんど外界との接触もなく、ほぼ無菌状態でした。

真っ白でふわふわの毛と肌色で長いしっぽ、真っ赤な眼をしたとてもきれいな女の子でした。

私は、ミミをもらって家で飼うことにしました。
餌は無くなると実験室でもらえましたから特別調達することもありませんでした。

私はティッシュの箱に新聞紙をちぎって入れ、餅焼網を乗せて輪ゴムで固定しただけの簡単なかごを作り、その中にミミを入れて飼っていました。

ミミは、環境が変わってしばらく大人しくしていましたが、慣れてくると自由に部屋中を駆け回りました。

いつしか自分がミミであることを自覚している様なそぶりを見せ、呼ぶと耳を立てて鳴く様にもなっていました。

両手で抱えて餌を食べる仕草は本当に愛らしく、しっぽを体に巻きつけて横になる寝姿は大変癒されました。

ある日、私が学校から帰ってくるとミミがいません。
部屋中を探しましたが見つかりませんでした。

暗くなってもミミは見つからず、その日は諦めて床につきました。

翌朝、自作のかごに手を入れましたが、ミミはいませんでした。

帰宅後、もうほとんど諦めかけた頃、押し入れの中でがざごそと音が聞こえます。
声をかけながら近付くと、小さく泣き声が聞こえます。

もう、押し入れの中にいるに違いないと思い、ふすまの前にあった荷物をどけて驚きました。

ふすまには、ミミがくぐるのに丁度良い穴が、まるで刃物で切り取ったみたいにそれは見事にくり抜かれています。

ご存じのとおり、ふすまは木枠に2~3枚の紙ではさむ様に張られていて、最初の2~3枚を食い破っても次の2~3枚も食い破らないと向こうには行けません。

そんなふすまをミミは何時間かけたのか、見事にくり抜いていたのです。

ふすまを開けると、枕の材料のもみ殻の袋からミミの声が聞こえます。

ビニール袋の上に紙袋をかけていましたが、その紙袋とビニール袋も丸く食い破られていています。

袋に手を入れて探るとミミの体に触れました。
そのあとは、何事もなかったかの様に手から餌をもらって元の可愛いしぐさを私に見せてくれました。

それにしても、あの鋭い前歯を使っての高度な仕事には、今でもほかでは見ることが出来ていません。

ハツカネズミのミミと暮らした約3カ月間の中での最大の思い出話です。

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