ホワイトデーのお返し


初恋は30年前、小学校3年生の時だった。
初恋というよりも、クラスの男の子で優しくて、いっしょにいると楽しいなあ、という友達の延長みたいな感じの気持ちだった。
どきどきという気持ちはあまりなく、バレンタインデーが近づいてくると、誰にチョコ上げようというような話題になるので、自分も誰かにあげないといけないような気になり、それで急に意識しだしてしまったのかもしれない。
とにかく、私は仲の良い数人の女子といっしょにバレンタインへ向けての作戦を練り会う会議を開いた。
それぞれのお目当ての男の子が違ったのは幸いだった。
本番を目前にけんかになってしまう危険が避けられるからだ。
私は彼女たちのアドバイスに沿って場所と時間を設定し、彼を呼び出し、手作りチョコを渡すことに成功した。
彼は満面の笑みで受け取ってくれ、両思いであることを伝えてくれた。
それからホワイトデーまでの1か月、私はルンルン気分で学校に通った。
彼とは以前にも増して親しくなり、おしゃべりがはずんだ。
そして、ホワイトデーの前日、彼が言った。
明日、学校が終わったら、一度家へ帰って、あの場所へ来てね。
私がチョコを渡した校舎の裏だった。
ホワイトデーの日、私は自分の持っている服の中で一番女の子らしいブラウスを着て行った。
そして、放課後に例の場所へ行った。
すると彼が大きな紙袋から、これまた大きなプラスチックの箱を取り出した。
中身はクッキーで、その量は私が渡したチョコの3倍はあった。
家へ持って帰り、母親に見せると、母親は驚いて、すぐ彼のお母さんに電話をかけ、このたびは、また結構なお返しをいただきまして、とお礼を言った。
A君はお母さんといっしょに大量のクッキーを焼いたのだ。
今考えると、元祖スイーツ男子だったのかもしれない。

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