わたしの蓋椀


中国茶を飲む時、蓋のついた茶碗を使います。
これを蓋椀と言います。

中国茶の奥深さにハマってあれこれと試していた頃、旦那が誕生祝いに
可愛い蓋椀を買ってくれました。

白地に桃の実と花が描かれた、薄手のいかにも高価そうな品でした。

とても嬉しくて、お茶の時間にはいつもそれを使い、旦那に感謝の日々でした。

お別れは突然でした。

忘れもしない東日本大震災。

わたしは潜り込んだこたつの中で恐怖のあまりべそをかきながら
キッチンから聞こえてくる、盛大な「ガッシャーン」という音に
なかば諦めのような気持ちでいました。

永劫のように長く感じた揺れが収まり、這い出してみればそこはまるで嵐の後でした。

家具はみな倒れ、キッチンは足の踏み場もなく、
そしてやっぱりわたしの大切な蓋椀は粉々に砕け散っていました。

かけらを拾いながら泣きました。

それなのに、他の安物の食器類は無事だったんです。

本当に悔しくてなりませんでした。

避難した先で兄にこの事を話したら、
「高価な陶器ほど薄く、安物は厚ぼったいから割れにくいんだよ」
と教えられ、なるほどなあと思いました。

今は片付けも済み、少しずつではありますが新しい食器を集めています。

短い間しか一緒にいられなかった桃の蓋椀には
楽しい思い出をくれてありがとう、と今でも感謝しています。

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